木の精霊キジムナーと相撲を取る?!その必勝法とは?
沖縄の木の精霊「キジムナー」には、相撲が好きだという伝承もあります。
人間よりも力が強くて相撲好きの妖怪といえば本土では河童ですが、これは河童が水神の依代や眷属、あるいは水神が零落した存在であり、相撲は水神に捧げる行事だったためとも言われています。
それでは、同じく水辺が好きで水や海に関わりのあるキジムナーと相撲には、どんなお話が遺されているのでしょうか。
キジムナーと相撲対決をした怪力のカタイラマーガ
宮古島には大昔にいた力持ちの、「カタイラマーガ」という人の伝説が遺っています。
よく知られる伝説では、女性だけが住むという村でその怪力を試されて、村の守り神の赤牛を倒したという話がありますが、そのカタイラマーガにはキジムナーと相撲を取ったというお話もあるのです。
沖縄にはヤラブの木という樹木がありますが、この木に棲むのが「インガマヤラブ」という精霊で、宮古島や伊良部島ではキジムナーの別名になっています。
このインガマヤラブは昔から風土病や伝染病を流行らせたということで、カタイラマーガはなんとかインガマヤラブを無人島に行かせようとして、親しい友だちになっていたそうです。
ある日の夕方、カタイラマーガはインガマヤラブの棲む家に行って、「今日は天気もいいし、月が出る晩だから、どちらが勝つか負けるか相撲を取ろう」とインガマヤラブに持ちかけました。カタイラマーガも相撲が好きですから、それでは取ろうと2人は庭に出ます。
キジムナーに相撲で勝つための方法とは
人間が相撲をする場合、普通はまず右手と右足を出して取る習慣がありますが、それでは人間ではないインガマヤラブには負けてしまうとカタイラマーガは考え、左手と左足を出して相撲を取ると何度やってもカタイラマーガが勝ったそうです。
相撲を取り終わったあとカタイラマーガは、自分が右手と右足を出せば負けてしまうのに、左手と左足を出すとどうしてこちらが勝つのかとインガマヤラブに尋ねました。そうするとインガマヤラブは「自分たちは人間が右手と右足を出せば決して負けないが、人間が左手と左足を出すのが恐ろしいのだ」と答えたのです。
この話をカタイラマーガから聞いた宮古島の人たちは、それからはインガマヤラブのような精霊や物の怪に相撲を挑まれた場合には、左手と左足を出して相撲を取ったので負けることがなかったのだそうです。
河童に相撲で勝つための必勝法で、相撲を取る前にお互いに頭を下げて礼をすれば、河童は頭のお皿の水がこぼれ落ちて力が出せなくなるというお話がありますが、キジムナーの場合には出す手足を右からではなく左からにするという、とても簡単な方法で良かったわけです。