実は怖い?!「キジムナー」の知られざる側面とは
赤く長い髪で子供の姿をした沖縄の木の精霊「キジムナー」。イタズラ好きで人間と関わることが好き。また、幸運を呼ぶ精霊ということで、沖縄ではとても親しまれています。
しかしこのキジムナーには、とても怖い側面もあるということです。
キジムナーと出会い一緒に貝を採った男
沖縄の久米島にこんなお話が伝わっています。
久米島の真謝というところ(島尻郡久米島町真謝)に、酒の肴に貝を採るのを楽しみにしているある男がいました。ある晩、いつものように貝を採っていると、男の前に7、8歳ぐらいの子供のような背格好で、赤毛でおかっぱ頭の若者が現れます。
男はしばらくその赤毛の若者と一緒に貝を採っていましたが、ほどなくして休憩のときに若者は持っていた瓶に入った飲み物を勧めてきました。それは良い香りの泡盛の古酒で、もらって飲むととても美味しいものでした。
男が若者に、どこに住んでいるのかと尋ねても、若者は笑って答えてくれません。また若者は、百年前の出来事をまるで昨日のことのように語るのでした。
ガジュマルの木を燃やした男
とても不思議な若者でしたので、男は若者と別れるとそのあとをこっそりとつけて行きました。そうすると若者は、村はずれの1本のガジュマルの木まで消えてしまいます。
家に帰った男が自分の妻にその話をすると、それは木の精霊のキジムナーだと妻は言います。妻は、キジムナーに魅入られると魂を抜かれてしまうと言い、そのガジュマルの木を燃やしてしまおうと言うのでした。
次の日、男が昨日と同じ場所に行くと赤毛の若者がいて、一緒に貝を採ることになります。
しばらくすると若者は、村はずれの上空が赤く染まっているのを見つけ、あれはなんだと言い、それがガジュマルの木が燃えているのだとわかると、急いで立ち去って行きました。
キジムナーの復讐
それから数年が経ったある日、男は沖縄本島の首里(那覇市、かつての琉球国の王都)に行く用事がありました。そして安里八幡宮に行ったときのことです。安里八幡宮は現在も那覇市安里にある神社で、琉球王国時代の15世紀に創始され琉球八社のひとつとなっています。
この安里八幡宮のそばに古いガジュマルの木があり、その下にお店がありました。男がその店の主人に昔のキジムナー退治の話をすると、主人の顔色が突如変わり、火のついた薪をいきなり男に突き刺したのです。薪は男の顔を突き刺し、燃える火で男は目を潰されてしまいました。
この店の主人は、あのキジムナーの若者だったのです。男はキジムナーから復讐されて目を潰され、久米島の真謝に帰ったのでした。
キジムナーは木の精霊ですが、なぜか火に関わりが深いという伝承もあります。原因不明の火は「キジムナーの火」によるものとされ、家の屋根からキジムナーの火が出ると、誰かが死ぬ予兆とも言われたそうです。