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竹取物語~日本を代表する昔話とSNSとの意外な関係

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現代では「日本の昔話の代表格」であり、「ほぼ誰でも知っている」という有名すぎる物語である竹取物語は、実は作者不詳の物語で、しかも原作にあたる原本は発見されておらず、室町時代に書かれたという写本が、現時点では最古の文献である、とされています。

背景には、インターネットが浸透し、SNS全盛の現代の日本、いや日本だけではなく、世界の国々が持っていると思われる「民衆の意識」が存在しています。

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各国の民話の根底にある「匿名性」

竹取物語には、昔話に付き物である「おじいさんとおばあさん」や「お姫様」、それに「やんごとなき人々(=貴族や皇族といった、身分の高い人物)」が登場します。

こういった昔話や民話における登場人物は、日本だけではなく、あらゆる国の「作者不詳の物語」に、たびたび登場します。これはなぜか。思うに、理由は大きくはふたつ、「民衆の意識」と「匿名性」の問題ではないでしょうか。

取り扱っている対象に、「やんごとなき人々」を含んでいる以上、時代が時代なら、下手をすれば取り立てられてて罰せられるようなこともあり得ます。というのは、登場する「やんごとなき人々」が、必ずしも「良い人物」として描かれているとは限らないからです。むしろ、「悪い人物」として登場している場合が少なくありません。

こういったトラブルを防ぐために、匿名性を保つことができる口承という手段で伝えられてきた可能性があります。

 

SNSにも通じる物語の成り立ち

現代のSNSでは、あらゆる階層の人が自ら発信し、中には自分自身の情報を公表する人もたくさんいますし、名乗らない場合でも、運営会社やインターネットプロバイダーを通じて、システムの記録から個人を特定することが可能ですが、ほんの数十年前までは、写真や文書にさえ残っていなければ、発信した個人を特定することは、大変困難でした。犯罪捜査においても、指紋やDNAといった科学的な証跡が採用されるようになったのは、近代になってからです。

竹取物語や、世界中に伝わる民話や伝説が作られたのは、少なくとも数百年前であり、旧約聖書や古代ギリシャ神話の物語の成立に至っては、数千年前という大昔の出来事です。匿名性を優先し、なおかつ証跡を残さないという「民衆側の意識」で制作されているが故に、時代時代のあらゆる階層の人々への賞賛や批判を語ることが可能となった、と考えるのは、無理があるでしょうか。

歴史上の革命や宗教の発生、学問や科学、技術や化学の発展には、実は匿名性が欠かせなかったのではないか、と思われます。竹取物語も、平安時代のあらゆる階層の人物を、縦横無尽に取り上げているからこそ、現代にまで伝承される物語となり得たのではないか、と考えられます。

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カテゴリ: その他

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