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「竹取物語」はいつ作られた?口承の物語の時代背景

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2018年の夏、昭和の時代に一世を風靡した人気テレビアニメ「まんが日本昔話」の語り部のひとりであった、俳優の常田富士男さんが、81歳で亡くなられました。

「まんが日本昔話」は、テレビアニメとしては異例の「声優さんがたったお二人」という番組でした。女優の市原悦子さんと、俳優の常田富士男さんが、すべての物語の「語り部」として、数十年間に渡って活躍されていたのです。

大昔から、多くの日本昔話が作者不詳で、口述による伝承がメインであったことを考えると、たったお二人で多くの日本の昔話を伝え続けてきたことは、驚嘆に値すると同時に、本当にすばらしいことです。竹取物語も、もちろん取り上げられています。

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テレビもラジオもない時代の「口承」という伝え方

テレビアニメなので、常田さんと市原さんによる、完全な「お二人だけによる口述」というわけではもちろんなく、多くのスタッフが関わってこそ作り上げることができて、後世に伝えることができたことは事実なのですが、現代とは全く異なる環境であったかつての日本の時代においても、竹取物語に代表される民話は、現代と同様に、多くの人々によって伝えられてきているのです。

「まんが日本昔話」における、常田さんの「むかーし、むかーし」という独特の語り口は、聞いたことがない人のほうが少ないのではないでしょうか。竹取物語は、このような伝え方を数百年以上もの間継続してきた結果、現代にも息づいているのです。

 

平安時代には成立していた?

現代にも伝わる、一般的な竹取物語の全貌が記録されている最古の文書は、室町時代(14世紀頃)に書かれたという写本である、という説が有力です。これ以前に原本があったと思われるのですが、見つかっていないため、後光厳天皇の筆といわれるこの時代の写本が、現存する最古のものになります。

しかし、有名な源氏物語の中で、既に竹取物語について「絵は巨勢相覧、手は紀貫之書けり」と言及されていることから、竹取物語の成立自体は、室町時代よりもさらに昔、10世紀頃には既に広く認識されていたのではないか、と思われます。また、万葉集や今昔物語など、日本の古い説話集や和歌集に登場するエピソードが民間に断片的に伝わり、それらを組み合わせて竹取物語の原型が作られたのではないか、ともいわれています。

竹取物語では、いわゆる「やんごとなき人々(=身分の高い人々)」が登場しますが、作者不詳のまま伝わっている理由は、現代におけるSNSの匿名性にも通じるものがあります。

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カテゴリ: その他

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