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石上神宮の元社・石上神社と今なお滝行が行われる桃尾の滝(奈良)

石上神社1
 
奈良県天理市にある七支刀とニワトリで有名なパワースポット・石上神宮から、国道25号線を天理ダム方面へと向かう道すがら、人家もほとんど見受けられなくなったところに「桃尾の滝」への行き先を示す標識があり、標識に従い左折し人気のない山道を登っていくと石上神社と呼ばれる神社があります。

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石上神宮と好対照な趣を持つ石上神社

この日は晴天であったにも関わらず、山深い場所にあるせいでしょうか、ところどころ木々の間から差す木漏れ日以外には光らしい光が入ってこず、社殿へと向かう長い石段は鬱蒼としていて登るのにも一苦労。

ようやくたどり着いた拝殿からさらに裏に回ってみると、御祭神・石上大神を祀る本殿があるのですが、石上神宮の御祭神である布留御魂大神の別名も石上大神。社名もわずか一字違い。

そう、石上神宮からほぼ真東に位置する、この誰からも忘れ去られたかのようなひっそりとした場所で鎮座する石上神社は、石上神宮の元社だといわれている神社なのです。

こじんまりとした境内には無造作に岩がゴロゴロと転がり、少し荒れ果てた感のある社殿と相まって非常に土俗的と言いましょうか、自然に任せるがままの太古の信仰の場、という感じがひしひしと伝わってきました。美しい社殿や楼門が整然と配置され、洗練された空間を作り上げている石上神宮と好対照なのが興味深いところではあります。

 

真言密教の霊場だった桃尾の滝

石上神社からさらに山道を登ると、右手に桃尾の滝が見えてきます。かつてこの地には高僧・義淵によって龍福寺が建立され、後に弘法大師・空海によって真言密教の一大道場として整備され隆盛を誇っていたそうです。

石上神社2

現在、龍福寺は明治時代の廃仏棄釈により廃寺となり、往時の大伽藍を偲ばせるものはといえば、この桃尾の滝と今では大親寺と名を変えた小さなお堂だけ。

しかし、桃尾の滝にはかつての霊場にふさわしく、今でも滝行を修される行者の方が後を絶たないようです。私が訪れた日にも、一人の行者の方が熱心に滝行を修されておられ、あまりの迫力に滝に近づくのが憚られるほどでした。

桃尾の滝は倒木なども散見され、一見荒れ果てているように思われたのですが、滝の前には整備された駐車スペースや屋根付きのベンチがあり、滝場が一種の舞台、行者の方が俳優、整備されたスペースが観客席と、まるで自然演劇場のような感があり、何やら荘厳な雰囲気が漂っていました。

全長約23m、古今和歌集には布留の滝と詠まれた桃尾の滝。一時は廃絶の憂き目にあい人々から忘れ去られたこの霊場に、今もこうして信仰が脈々と受け継がれているのを見ると、やはりこの場に宿る土俗的なパワーに人々が惹かれるせいなのかも、と実際に訪れてみてそう痛感した次第であります。

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