若すぎた日の出来事。神様は全てお見通しとしか思えないおみくじの結果
嫌な話でもうしわけないのですが、これは私の浮気体験のなかで起こった出来事です。
今思えば若すぎた日々でした
若気の至りといえばそれまでですが、当時独身だった私は、職場で知り合った十五年上の既婚の女性と恋愛関係になり、相手の旦那さんにわからないよう巧みに時間を作っては、逢瀬を重ねていました。
相手の女性は、スポーツが好きで、余暇はテニスに興じるといったスポーツウーマンでした。
学生時代に私もテニスをやっていたこともあり、話しもあい、そのうち休憩時間などに二人で雑談を交すようになりました。
何がきっかけかだったかは、いまとなってははっきりとはおぼえていないのですが、どちらからともなく、一度どこかで会わないかということになり、私は無邪気に喜んで、休日にテニスコートや草野球場がある広い河川敷をその場所にえらびました。
その日のために私は市に頼んでテニスコート使用許可を得、忘れもしません、晴れあがった空の下で二人は、ラケットを手に、ボールを打ち交わしたのでした。
彼女は、私が意外に高いスキルをもっているのに感心し、見る目もその時から変わったように感じました。
私は、ボールを追う彼女の、翻るスカートからのびるしなやかなあしに、目を奪われました。
会社で事務を執っている時のものしずな彼女とはまるでちがう一面をまのあたりにして、そのときあたりから私の心は、彼女にひきつけられていったのでした。
後に引けないところまで来ていました
それからいくらもたたない間に、二人はさらに深い関係になりました。
もうどうしょうもない衝動に、私は突き動かされたのです。
会社ですれちがったときなどに、彼女からむけられる熱いまなざしや、コピー機のまえで二人だけになったときにみせる彼女のおもわせぶりな態度にふれているうちに、私はもう、矢も楯もたまらなくなって彼女を誘ったのでした。
既婚者で子供もいる彼女なので、拒否されるものとばかり思っていたところ、彼女は目に笑みをたたえてうなずいたのでした。
私たちは半年ほど、秘密の逢瀬を繰り返しました。
私も彼女も、すっかり夢中になって、あげくはこのままどこかへ行ってしまおうというところまで自分たちを追い込んだのでした。
彼女の家族のことは、私には何もわかりませんでした。
しかし私とこんな深い関係になるぐらいなので、彼女の夫婦関係がうまくいっているとは到底思えませんでした。
ついに2人で旅をすることになります
その日私たちは、駅で待ちあわせて、長距離列車に乗り込みました。
そして途中下車したところで、一泊の宿をとることにしました。
そこは温泉などで有名な観光地で、夕刻に私たちは、土産物店などがならぶ通りを、言葉なく歩いていました。
ここまで来てはいても、二人とも、まだ胸の内は激しく揺れ動いていたのはまちがいありのせん。
本当にこのままがむしゃらに行ってしまっていいのだろうか。
行った先ではたして暮らしていけるのだろうか。
そんな思いが千々に乱れて私の中を去来しました。
戯れに神社でおみくじを引いてみることに
神社の境内にさしかかったところ、彼女が御神籤をひいてみましょうと言い出しました。
私はたいして考えもしないで、彼女と交互に御神籤をひきました。
とたんに彼女が、「いや」と声をあげました。
私はけげんに思い、彼女のひいた御神籤に目を通しました。
そこには、このまま帰れば、亭主とよりをもどせますと、はっきり書いてあったのです―――。
すでにそれから数十年がたちました。
結局彼女は夫のもとに帰りました。
あのとき出た占いに、彼女が促されたかどうかは定かではありませんが、私もまたあれをみたとき、それまで曖昧模糊としていた気持ちが、はっきりした形をとったのではなかったのでしょうか。
ただただ勢いの赴くまま、突っ走ってしまった自分の、浅はかさがいまならよくみえます。
あのとき出た御神籤は、そんな私の熱くのぼせた頭をほどよく冷やしてくれたのかもしれません。