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戦う狼男~北欧神話の世界に伝わる狼たちの物語

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狼男の起源を探るときに、古代のギリシャやローマと並んでもうひとつ忘れてならないのは北欧です。

ノルウェー、スェーデン、デンマークやアイスランドなどで構成される北欧のキリスト教化以前の古代は、ノース人たちの北欧神話の世界でした。そこでは神族や人間族、亜人たちが活動し、様々な怪物もいました。そのなかに、ヨーロッパの狼男につながる伝説も存在したのです。

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戦争と死の最高神が従える2頭の狼

北欧神話世界では、狼は特別な存在でした。主神であり戦争と死を司る神オーディンは、ワタリガラス(レイブン)のフギンとムニンとともに、ゲリとフレキという2頭の狼を従えていて、アース神族の国アースガルドに建てられた死者の館ヴァルハラの王座につくとされています。

ゲリとフレキは一対で、その名はゲリが「貪る者」フレキが「飢える者」を意味し、ともに「貪欲な者」を表しているそうです。オーディンは食事を摂る必要がなく、ただワインだけで生きているので、オーディンの食物はこの狼たちに与えられるのだとか。この2頭を従えるだけでなくオーディン自身も狼に変身したとされていますから、オーディンはギリシャ神話のアポロンと同じように「狼を操る者」であり、狼がトーテム獣だったのかも知れません。

 

戦争と死の館には勇士たちが集められた

さて、オーディンの館ヴァルハラには、戦場で死を定め勝敗を決する女神ワルキューレによって選別された王侯や戦士の魂が、戦いの場から生き返って迎え入れられ、もてなされました。集められた勇士たちは、北欧神話世界における終末の日である「ラグナロク(神々の黄昏)」での巨人たちとの戦いに備えて、このヴァルハラで戦いの訓練に励むのだといいます。

ヴァルハラには、槍でできた壁や盾の屋根、鎧でできた長椅子などがあり、多くの狼や鷲が館内をうろついています。狼は勇猛であると同時に戦死者の死骸に集まるとされていますから、ヴァルハラとはすなわち戦場を象徴した場所であったわけです。

 

オーディンの戦士となった狼男

戦争と死を司る神オーディンの命でワルキューレによって集められた戦士たちは、「ベルセルク」と「ウールヴヘジン」とに分けられました。ベルセルクとは「熊の毛皮を被った者」、そしてウールヴヘジンは「狼の毛皮を被った者」を意味します。

館に待機している普段は温和な戦士たちも、ひとたび獣の毛皮を被ると身体もひとまわり大きくなり、戦場で傷つくことも死をも厭わず勇猛果敢に戦う獣人となります。ウールヴヘジンとは、まさに狼男の戦士であったわけです。この北欧神話における戦う狼男については、別の記事でさらに詳しく探っていくことにしましょう。

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